
食いしん坊倶楽部のLINEオープンチャット「山手線!本気の昼飯マップ」では、メンバーから寄せられたランチメニューを深掘りしてお届け。第12回は、恵比寿『エビス バインミー ベーカリー』の「揚げ鯖トマトソース煮込みバインミー」です。
この店のバインミーを一度食べたら、それを超える味に出会えなくなります。メニューは全9種類で、牛、豚、鶏、魚介、ベジなどバラエティ豊富なラインナップ。私は魚が好きなので、「揚げ鯖トマトソース煮込みバインミー」を食べることが多いです。現地さながらのナマスやパクチーなどがもりもりに挟まれてボリューミーなのがまた嬉しい。さらに、店舗向かいの工房で焼くパンがまた格別です。レギュラーサイズは意外と大きめですがパンの食感が軽いので、気がつくとペロっと1本食べきっています。
JR・東京メトロ「恵比寿駅」から徒歩3分。昭和の空気が残る「えびすストア」内に『エビス バインミー ベーカリー』は店を構える。「本格派のバインミーが食べられる」と言われる、知る人ぞ知る名店だ。食いしん坊倶楽部のLINEオープンチャット「山手線!本気の昼飯マップ」でも、クワハラすえぞうさんがこの店を推薦すると「ここ美味しいですね!」(まつみーさん)、「私もこの店を基準で、バインミーが美味しいか否かを判断していますが、ここより美味しいところにはなかなか出会いません」(インディさん)とリプライが続いて盛り上がったほどだ。
クワハラすえぞうさんのお気に入りのメニューがこちら、「揚げ鯖トマトソース煮込みバインミー」。しっかり揚げた鯖の香ばしい香りが鼻をくすぐり、一口食べてみると、ジュワッと溢れ出す鯖の旨みと酸味の効いたトマトソースはなんとも相性がいい。たっぷり挟まれたなますは鯖の味をさっぱりとした印象に変えるだけでなく、食感のアクセントを加える。さらにはピリ辛のチリソースはパンチが効いていて、後引く旨さを生み出しているのだ。
バインミーの種類は全部で9種類。オーナーの茂木貴彦さんが「特にベトナムらしさを感じる」とオススメするのが、チャーシューとレバーパテが入った『バインミーサイゴン』だ。「現地のバインミーはレバーパテが入っているものが多いんです」と、話す。
店の立ち上げ前には、当時のスタッフがベトナム北部ヴィンフック省の省都ヴィンイェン市の老舗ベーカリー「HUNG YEN BAKERY」に研修に行き、本場のレシピを習得。そのうえで、『エビス バインミー ベーカリー』では現地で肉、魚介、ベジタリアン向けなど食材バランスを考えながらメニューをつくった。
肉系のバインミーは食べ応え満点。なますやパクチーもたっぷり挟んであるので、バランスよく食事ができている気分になれるのもいい。
「『エビチリマヨとアボカドのバインミー』は、現地にはない組み合わせですが、日本で人気の組み合わせなのでメニューに加えました」と茂木さん。さらに、ベジタリアンの人でも安心して食べられるように「チョップドサラダバインミー」や「揚げ豆腐と季節野菜のバインミー」も考案。観光客が多く、さまざまな食のスタイルの人が集まる恵比寿という街にふさわしいラインナップだ。
そして、食いしん坊倶楽部のメンバーも注目しているのが、店舗の向かいの工房で焼いている自家製パン。皮が薄くて軽く、生地はしっとりしていてふわふわ。小麦粉の甘くてやさしい香りがたまらないのだ。
「現地で学んできたレシピを再現しつつ、国内で手に入る香りのいい小麦粉でアレンジしています。毎週木曜、土曜、日曜は製パンがお休みなので、焼き立てのパンでバインミーを食べたい人はそれ以外の日を狙ってみてください」
茂木さんが運営する会社では2003年にベトナム屋台料理屋『チョップスティックス 高円寺本店』を開き、フォーやコムガー(カオマンガイ)など現地の料理をいち早くメニューに取り入れてきた。「ベトナムで定番のストリートフード、バインミーの専門店を始めよう!」と満を持して『エビス バインミー ベーカリー』をオープンさせたのは、2017年のこと。奇しくも日本で起きた空前のバインミーブームと重なった。
「『えびすストア』内に出店したのは、コマとこけしの専門店など昭和の匂いが残る店が並ぶこの場所の雰囲気が、ベトナムの屋台街の雰囲気と重なったからでした」と茂木さんは話す。現地の屋台をイメージした店内では、ベトナム人のスタッフもたくさん働いている。本場のバインミーをよく知る彼らがつくるからこそ、この店の料理はさらに本格派の味わいになるのだ。
文:吉田彩乃 写真:伊藤菜々子